WATER SCAPE

熊本地域の地下水持続性確保に向けた
研究プロジェクト

熊本地域の地下水が、熊本地域の重要な社会基盤の一つとして住民の生活や企業活動を支えていることを踏まえ、これらに欠かすことのできない熊本地域の地下水の持続性確保に向け、政策提案やモニタリングを軸とした今後の定常的な活動計画策定の実現可能性を探るプロジェクト。

20227.4

初回打ち合わせ

サントリー九州熊本工場が立地する熊本地域において、弊社が蓄積してきた地下水に関する知見が、熊本地域の持続的な地下水利用に貢献しうるのではないかと考えていました。そこで、これまでもデータ提供等でお世話になってきた、公益財団法人くまもと地下水財団様(以下、財団様)に、活動提案をさせていただきました。
この提案に対し財団様側も、大手半導体メーカーの進出に伴う新規の大規模な地下水利用の発生や、これまで実施してきた涵養施策の限界等の課題があること、そしてサントリーグループが開発してきた水循環モデルを軸としたアプローチの有用性があるだろうとコメントいただきました。
この打ち合わせを契機に、本プロジェクトが本格的に始動しました。

20229.13

本プロジェクトのゴール設定

私たちが最初に行ったのはゴールの明確化です。私たちからは具体的なアウトプットとして、様々なシナリオに基づく予測結果を出すことを提案させていただきましたが、財団様からは、このプロジェクトのアウトプットがどのようなアウトカムを出せるかどうか、より高い視座にたった目標を置きたいとのリクエストをいただきました。
その場の協議を経て、アウトカム目標として、今回のプロジェクトのアウトプットから政策提案や今後の熊本地域地下水総合保全管理計画への反映を目指すことを確認しました。その上で、このアウトカム目標に対して打ち手の課題を確認しました。

202211.11

熊本県の関わり方に関する協議

ここまでの協議を行う中で、熊本県様も水循環モデルを使った活動を進めていることが判明しました。地下水に対する関心が高い熊本地域において、多くのステークホルダーが関わっており、同じような取り組みが計画されることはありうることです。
ただ、このケースの場合、同じ熊本地域において、同じソフトウェアを使いながら、各活動主体が異なるモデルを作ることは具合が悪いだろうという課題認識を熊本県様も私たちも共有しました。そこで、今後、お互いの活動の情報共有を密接に取りながら、本プロジェクトを推進することで合意しました。
このように、必要に応じて他のステークホルダーとの関わりも持ちながら、プロジェクトを推進します。

20231.1

協定の締結

ここまで、財団様と弊社だけでなく、熊本県様や有識者として熊本大学嶋田名誉教授にも関わっていただきながら、活動計画を検討して参りました。この内容を、熊本県様と嶋田先生を立会人として、研究プロジェクトを推進する協定を締結しました。

20233.27

長期観測データ分析結果の報告

まず初めに実施したことは、データの分析です。熊本地域では、過去30年以上にわたり、100か所以上の観測井戸で、地下水位データが蓄積されてきました。これらすべてのデータを解析しました。その結果、地域や帯水層別に長期トレンドが異なることが分かりました。そして、本プロジェクトの目標達成には、この長期トレンドを再現できる水循環モデルを得ることが重要と考えられました。

20237.25

水循環モデルの構築結果の報告

水循環モデルが達成しなければならない目標値が明確になったことを受け、長期の土地利用の変化や、水利用の変化といった、地域でモニタリングされているデータを収集し、水循環モデルにインプットしました。そして水循環モデルが算出する地下水位と、観測された地下水位の長期トレンドを比較しました。最初は両者に乖離が見られましたが、地下の地質構造等のパラメータをチューニングすることで、観測値の長期トレンドを再現する水循環モデルを構築することができました。

20238.30

水循環モデルを利用した
シミュレーション計画の協議

水循環モデルができたことを受け、このモデルを使ってどのようなシミュレーションをすればアウトカム目標である政策提案や、今後の熊本地域地下水総合保全管理計画への反映を目指すために必要なアウトプットを得られるか協議を行いました。その結果、気候変動に伴う降水量や降水パターンの変化、また地下水利用量の変化や、熊本地域で重要と考えられていた水田・畑地の土地利用変化が、熊本地域の地下水に及ぼす影響をシミュレーションすることが重要と考えられました。

202312.13

AGU2023で、水循環モデル
構築結果に関して発表

本プロジェクトの対外的なアピール、並びに有識者との議論によるブラッシュアップを目的として、米国で開催されているAGU(アメリカ地球物理学連合) Fall Meeting 2023にて発表しました。

202312.20

最終報告会

協議した計画に基づき、様々なシミュレーションを行った結果を確認しました。この結果、熊本地域において、水田灌漑が行われなくなる等の農業活動が地下水・湧水に及ぼす影響が大きいことが定量的に示されました。この結果は、これまでの地下水の利用と涵養のバランスを取る施策だけでなく、農業活動を保全していくことの重要性が示唆されました。このようなアウトプットは熊本県様とも共有を行いました。今後の施策への反映が期待されます。

20244.22

EGU2024にて、
シミュレーション結果を発表

本研究プロジェクトの全体のアウトプットを対外的にアピールするため、欧州で開催されているEGU(欧州地球科学連合)General Assembly 2024にて発表を行いました。

地下水学会誌に掲載(予定)

本研究プロジェクトの全体のアウトプットを公知のドキュメントとすることを目的として、日本地下水学会誌に投稿しました。

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